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債務整理に関する記事詳細
個人再生をしても減額されない債権①-共益債権・一般優先債権
弁護士の櫻田です。
個人再生は,住宅ローン以外の借金について大幅な減額を受けるという手続です。
しかし,中には,そもそも個人再生の対象とすることができず,減額されない債権があります。また,個人再生の対象となっても,減額が認められない債権もあります。
そこで,今回は,前者の,個人再生の対象とならず,個人再生をしても減額されない債権,具体的には,共益債権と一般優先債権についてご説明します。
なお,後者の,個人再生の対象となっても,減額が認められない債権(非減免債権)については,別の記事でご説明します。
目次
- 1 個人再生の手続の対象とならない債権の概要
- 1.1 共益債権
- 1.1.1 ①再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(民事再生法119条1号)
- 1.1.2 ②再生手続開始後の再生債務者の業務,生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権(民事再生法119条2号)
- 1.1.3 ③再生計画の遂行に関する費用の請求権(再生手続終了後に生じたものを除く。)(民事再生法119条3号)
- 1.1.4 ④各種の法定の手続により支払う費用,報酬及び報償金等の請求権(民事再生法119条4号)
- 1.1.5 ⑤再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権(民事再生法119条5号)
- 1.1.6 ⑥事務管理及び不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権(民事再生法119条6号)
- 1.1.7 ⑦再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で,再生手続開始後に生じたもの(前各号に掲げるものを除く。)(民事再生法119条7号)
- 1.1.8 ⑧再生手続開始決定により中止又は効力を失った破産,強制執行等の手続のために再生債務者に対して生じた債権及びその手続に関する再生債務者に対する費用請求権等(民事再生法39条3項)
- 1.1.9 ⑨双方未履行双務契約について再生債務者等が履行を選択した場合の相手方の請求権民事再生法49条4項)
- 1.1.10 ⑩継続的給付を目的とする双務契約において,相手方が再生手続開始の申立て後,再生手続開始前にした給付にかかる請求権(民事再生法50条2項)
- 1.1.11 ⑪再生債務者が再生手続開始の申立て後再生手続開始前に,資金の借入れ,原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことができない行為をする場合で,裁判所がその行為によって生ずべき相手方の請求権を共益債権とする旨の許可をしたもの(民事再生法120条1項)
- 1.2 一般優先債権
- 1.1 共益債権
個人再生の手続の対象とならない債権の概要
そもそも個人再生の手続の対象とならず,個人再生をしても減額されない債権として,「共益債権」と「一般優先債権」があります。
これらは,個人再生の手続とは関係がなく,随時,支払いをする必要があります(民事再生法121条1項2項,122条1項2項)。
共益債権
共益債権には,例えば,次のようなものがあります(民事再生法119条等参照)。細かいことなので,すべて覚える必要はありませんが,多くが再生手続開始後に発生するものであることを確認しておきましょう。
繰り返しになりますが,大事なことは,次に列挙されたものについては,個人再生をしても減額されず,支払いをしなければならないということです。
①再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(民事再生法119条1号)
例えば,個人再生の申立てに必要な申立費用(収入印紙,官報公告費用等)などです。②再生手続開始後の再生債務者の業務,生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権(民事再生法119条2号)
例えば,再生手続開始後,生活に必要な家賃や水道光熱費,業務に必要な賃借料や維持費のことです。③再生計画の遂行に関する費用の請求権(再生手続終了後に生じたものを除く。)(民事再生法119条3号)
④各種の法定の手続により支払う費用,報酬及び報償金等の請求権(民事再生法119条4号)
例えば,個人再生委員の報酬などです。個人再生委員の報酬額は,案件や管轄裁判所によって異なります(概ね15~20万円程度)。東京地方裁判所の場合は,全件につき個人再生委員が選任され,報酬額は15万円です。
⑤再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権(民事再生法119条5号)
⑥事務管理及び不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権(民事再生法119条6号)
⑦再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で,再生手続開始後に生じたもの(前各号に掲げるものを除く。)(民事再生法119条7号)
⑧再生手続開始決定により中止又は効力を失った破産,強制執行等の手続のために再生債務者に対して生じた債権及びその手続に関する再生債務者に対する費用請求権等(民事再生法39条3項)
⑨双方未履行双務契約について再生債務者等が履行を選択した場合の相手方の請求権民事再生法49条4項)
⑩継続的給付を目的とする双務契約において,相手方が再生手続開始の申立て後,再生手続開始前にした給付にかかる請求権(民事再生法50条2項)
⑪再生債務者が再生手続開始の申立て後再生手続開始前に,資金の借入れ,原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことができない行為をする場合で,裁判所がその行為によって生ずべき相手方の請求権を共益債権とする旨の許可をしたもの(民事再生法120条1項)
一般優先債権
一般優先債権には,「一般の先取特権」と「その他一般の優先権がある債権」があります(民事再生法122条1項)。いずれも,個人再生をしても支払う必要があるものです。①一般の先取特権
先取特権とは,法律で定められた特別の債権を持っている場合,法律の規定に従って,債務者の財産から他の債権者よりも先に支払いを受けることができる権利のことです。先取特権のうち一般の先取特権には,次のものがあります(民法306条)。
共益の費用
共益の費用とは,各債権者の共同利益のためになした,債務者の財産の保存,清算又は配当に関する費用のことです(民法307条1項)。少々分かり難いかもしれませんが,例えば,マンションの管理費や修繕積立金などがこれにあたります。
雇用関係
雇用関係に基づいて発生した給料などの債権も,一般の先取特権にあたります(民法308条)。人を雇っていれば,その給料は,再生手続とは関係なく,支払う必要があります。葬式の費用
葬式の費用も,それが相当な額である限り,再生手続とは関係なく,支払わなければなりません(民法309条)。日用品の供給
日常生活に必要な光熱費や飲食品にかかる費用でその過去6ヶ月の滞納分については,支払わなければなりません(民法310条)。②一般の優先権がある債権
所得税や住民税などの税金,国民年金,国民健康保険,社会保険料,罰金などの公租公課のことです。これらは,個人再生をしても減額されません。なお,公租公課に滞納があれば,滞納処分によって,給与や預金を差し押さえられる可能性がありますので,優先的に支払う必要があります。
今回は,以上のとおり,個人再生の対象とならず,減額の対象とならない債権についてのご説明でした。
個人再生の対象となっても減額の対象とならない債権(非減免債権)については,記事を改めてご説明します。