自己破産とは
自己破産とは,債務(借金等)の返済が困難な場合,裁判所に対し,破産手続開始・免責許可の申立てをして,所有する一定の価値ある財産を処分・換価した上で,債務の返済義務を免除(免責)してもらう手続です。
自己破産のメリット・デメリット
メリット
- 税金や一部の非免責債権を除いて、すべての債務の支払義務を免れることができます。
- 99万円までの現金や日常で使用する家具や家電は残すことができます。
- 破産手続開始決定により、強制執行を中断・失効させることができます。
デメリット
- 所有する財産は、一部を除いて、処分・換価しなければなりません。
- 職業制限(資格制限)があります。
- 一定期間,新たな借入やクレジットカードの利用ができなくなります。
- 官報に,氏名・住所が掲載されます。
- 免責を受けた後7年間は,自己破産をしても免責を受けることはできません。
自己破産をする上での注意事項
同時廃止型と管財事件型
資格制限(職業制限)
破産者は,破産手続中,一定の職業に就くことができません。
したがって,こうした制限のある職業に就いている方は,配置転換や休職等ができなければ,
原則として,破産手続の申立てに伴って,その仕事を辞める必要があります。
しかし,この資格制限(職業制限)は,破産手続開始決定から免責を受けて復権するまでの間(概ね3〜6ヶ月間)のものですので、
破産手続きが終了して復権すれば、当然にこの制限はなくなりますので、ご安心ください。
免責不許可事由
破産手続の申立てをしたからといって,必ず免責が認められるわけではありません。
以下のような「免責不許可事由」がある場合には免責が許可されない可能性があります。
ただし,免責不許可事由に該当する場合でも,その事情や経緯を誠実に説明した上で,
これまでの行為を深く反省し,浪費等が改まる見込みがあると判断されたり,散逸した財産を取り戻したりすれば,
裁判所の裁量で免責を受けられることがあります(これを「裁量免責」といいます)。
自己破産手続に伴う義務
破産手続開始決定によって,次のような義務や制限が生じます。
違反した場合には,罰則を科せられることがあります。
破産手続開始決定に伴う義務・制限の例
- 破産手続や免責に関する裁判所や破産管財人が行う調査に協力して,必要な説明等をする義務が生じます。
- 裁判所の許可を受けなければ,住所等を移転したり,旅行をしたりすることができなくなることがあります。
- 管財事件型の場合,郵便物を破産管財人に転送する措置がとられます。
財産の換価・処分
自己破産をしても,以下のとおり,必要最低限度の財産は手元に残すことができます(これを「自由財産」といいます)。
自由財産の例
※上記は、東京地方裁判所における基準です。他の裁判所では基準が異なることがあります。
解決事例
ケース1子供の教育費,母の治療費などのために6社から借入れをした合計730万円の借金を自己破産で解決!Aさん男性/60代/東京都在住/会社員
弁護士に依頼する前
負債の状況
債権者 |
借入残高 |
毎月の返済額 |
A社 |
150万 |
3万 |
B社 |
30万 |
1万 |
Cカード |
50万 |
1.5万 |
D社 |
180万 |
3.5万 |
E銀行 |
200万 |
4万 |
F社 |
120万 |
2万 |
合計 |
730万 |
15万 |
資産・収入の状況
月収:25万円
資産:現金50万円,自動車,保険
依頼前の事情
Aさんは,子供の教育費に充てるため教育ローンを組んでいたところ,母が病気になり,その治療費を負担せざるを得ない状況になりました。
そのため,教育ローンの返済や,母の治療費を捻出するため,複数の業者から借入れを繰り返し,結果,返済が困難な状況に陥ってしまいました。
弁護士に依頼した後
依頼後の状況
年齢や収入状況を考慮して,現状返済が困難で,今後,収入が増加して返済が可能となる見込みがありませんでしたので,自己破産の方針を採ることにしました。
借入総額は700万円を超えており,高額ではあったものの,主な借入原因は,子供の教育費や母の治療費のためであり,浪費の傾向はほとんどありませんでした。
当事務所に依頼をいただいた後,返済を停止し,収入の範囲内で家計の見直しを図り,弁護士費用は分割でお支払いいただきました。
裁判所へ申立てをし,一定の財産を保有していたことから管財手続となりました。
破産手続では,管財人の引継予納金20万円を支払った後の現金30万円と,資産価値の低かった自動車・保険は,換価・処分されず,自由財産として保持することができました。
免責手続でも,借入原因等を誠実に説明した結果,特に問題となる点はなく,債権者集会を経て,申立てから約4ヶ月後に無事免責許可を受けることができました。
弁護士費用
弁護士費用:410,400円(税込)
※弁護士費用は,9回の分割払いでした。
※上記弁護士費用には,申立費用(収入印紙・郵券代,官報公告費用)を含みます。
※東京地方裁判所への申立てであったため,日当交通費は頂戴しておりません。
ケース2事業資金のための借入れやギャンブルによる損失で膨らんだ膨大な借金を自己破産で解決!Bさん男性/40代/神奈川県在住/会社員
弁護士に依頼する前
負債の状況
債権者 |
借入残高 |
毎月の返済額 |
A銀行 |
300万 |
5万 |
B社 |
250万 |
4万 |
C銀行 |
200万 |
4万 |
D銀行 |
100万 |
3万 |
Eカード |
120万 |
3万 |
F社 |
50万 |
0.5万 |
G社 |
300万 |
3万 |
Hカード |
200万 |
2.5万 |
I社 |
50万 |
1万 |
合計 |
1570万 |
26万 |
資産・収入の状況
月収:28万円
資産:有価証券(株式)
依頼前の事情
Bさんは,転職して会社員となる前,個人事業主として食品販売店を経営していましたが,その事業資金として,500万円の借入れがありました。さらに,返済のストレスから,競馬等のギャンブルにも300万円程度をつぎ込んでしまいました。
返済のために借入れをせざるを得ない自転車操業状態が続き,自分ではどうしようもなくなってしまいました。
弁護士に依頼した後
依頼後の状況
自営の販売店を閉店後,転職をして一定の収入がありましたが,返済をしていくことは困難な状況でした。そのため,自己破産の方針としました。
借入総額は1500万円を超えており,さらに,借入の原因として,事業資金やギャンブル資金も含まれていたので,免責不許可事由に該当し得る案件でした。
受任後,まず,ギャンブルで借入を増大させてしまった点を見直していただき,今後は一切ギャンブルをしないことを誓約していただきました。
また,自営をしていた頃の事業の内容,経営の状況,廃業に至った理由等を詳細に調査しました。
弁護士費用を分割でお支払いいただいた後,裁判所へ申立てをし,元個人事業主であること,ギャンブルによる免責不許可事由に該当し得ることから,管財手続となりました。
管財人の調査においては,事業やギャンブルの状況を詳細に報告するなどして誠実な対応をしました。保有していた有価証券(株式)は,日常生活に不可欠なものではなかったため,管財人により処分・換価の対象となりました。
以上,過去の経緯を誠実に報告し,弁護士受任後は生活態度を改善したことから,免責相当とされ,裁量免責を受けることができました。
弁護士費用
弁護士費用(日当交通費2回分含む):47万5200円(税込)
※弁護士費用は,5回の分割払いでした。
※上記弁護士費用には,申立費用(収入印紙・郵券代,官報公告費用)を含みます。