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個人再生の再生計画が認可された後に返済が難しくなった場合の対応①-再生計画の変更


弁護士の櫻田です。

個人再生手続をして,再生計画が認可された後は,3~5年の間,再生計画に従って返済を続けていくことになります。

しかし,流動的な世の中です。勤務先の倒産,転職,事故,病気など,やむを得ない事情で,再生計画通りの返済が困難になってしまうこともあるかもしれません。

実際,当事務所の依頼者の方からも,再生計画が認可された後に,経済事情が変化して,返済が困難になってしまったという相談が少なからずあります。

そこで,今回は,再生計画認可後に返済が困難になってしまった場合の対応として,再生計画の変更について説明します。

再生計画の変更の条件


一度,再生計画を作成して,裁判所に認可を受けている以上,無条件に再生計画の変更が認められるわけではありません。

再生計画の変更が認められるためには,次の条件を充たしている必要があります(民事再生法234条1項・244条)。

再生計画認可の決定があった後であること

まず,再生計画の認可を受けていることが条件になります。

再生計画の変更とは,一度,認可された再生計画を変更するものなので,当然の条件といえます。

やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難になったこと

次に,再生計画の認可を受けた後に,やむを得ない事由により,再生計画通りに返済をすることが困難になってしまったことが条件になります。

ここでは,「やむを得ない事由」の解釈が重要なポイントです。

一般的に,やむを得ない事由とは,当初の再生計画を作成する段階では現実に発生しておらず予想もできなかったような理由で,しかも,再生債務者が自分ではコントロールすることができないような事情のことをいいます。

具体的には,次のような事情が例として挙げられます。

・勤務先の会社の業績が悪化して減給されてしまった場合
・転職をしてかえって給与が下がってしまった場合
・勤務先の会社の都合で雇用形態が変わり歩合給や残業代がカットされた場合
・事故や病気により休職してしまった場合
・自分や家族が病気になり医療費の支出が増大してしまった場合

これらに対し,ギャンブルや買い物・飲食等の浪費で支出が増加した場合や,自己都合で勤務先を退職して転職もしない場合などは,やむを得ない事由とは認められない可能性が高いでしょう。

再生計画の変更の内容



では,再生計画の変更をするための条件を充たしたとして,変更の内容はどうなるのでしょうか?

以下,注意すべき点をまとめます。

返済期間を最大2年間延長することしか認められない!


変更の内容ですが,結論としては,再生計画を2年以内の範囲で延長することしか認められません。

つまり,再生計画の変更が認められれば,当初の再生計画の返済期間が3年であれば5年まで,5年であれば7年まで返済期間を延長することができます。

2年延長することでどのような効果があるか,簡素化した事例で検討してみましょう。

当初の再生計画の内容
返済期間:3年(36回払い)
返済総額:180万円
毎月の返済額:5万円

返済期間を1年延長した場合の再生計画の内容
返済期間:4年(48回払い)
返済総額:180万円
毎月の返済額:3.75万円

返済期間を2年延長した場合の再生計画の内容
返済期間:5年(60回払い)
返済総額:180万円
毎月の返済額:3万円

上記の事例のとおり,当初の返済期間3年の再生計画では,毎月の返済額は5万円ですが,再生計画の変更をして,返済期間を1年延長して4年とすると毎月の返済額は3.75万円(マイナス1.25万円),2年延長して5年とすると毎月の返済額は3万円(マイナス2万円)となります。

なお,上記の事例は,既に返済した分を考慮しない簡素化したものですので,実際は,より複雑な検討が必要になります。

このように,毎月5万円の返済は困難になってしまったが,返済期間を延長して,少なくとも毎月3万円の返済ができる(認可後の収入減少や支出増大が2万円の範囲内)のであれば,再生計画の変更をする意味があることになります。

逆に,返済期間を2年延長しても返済ができないようであれば,再生計画の変更をすることはできず,ハードシップ免責や自己破産など別の手続を検討する必要があります

当初の再生計画で定められた返済総額を減額することはできない!

上記の事例からも分かるかと思いますが,再生計画の変更が認められたとしても,当初の再生計画で定められた返済総額を減額することはできません

当初の再生計画認可の段階で既に借金の大幅な減額がなされているので,再生計画を変更するからといっても,さらに返済総額を減らすということはできないのです。あくまで,返済期間を最大2年間延長できるだけです。

上記の事例では,返済期間が延長できたとしても,返済総額180万円は減額されることはありません。

繰り返しになりますが,返済期間を延長しても当初の返済総額を返済できる見込みが立たないようであれば,再生計画の変更の手続をとることはできず,別の方法で解決を図る必要があります

住宅ローンの返済期間は延長されない!

住宅ローンがあり,当初の再生計画に住宅資金特別条項を付している場合,再生計画の変更をしても,住宅ローンの返済期間を延長することはできません

住宅ローンは個人再生をしても減額の対象とならず,別枠で考える必要がありますので,再生計画を変更しても,住宅ローンの返済条件には影響を及ぼさないのです。

再生計画の変更の手続


再生計画の変更をする場合,改めて,裁判所に対して,再生計画変更の申立てをする必要があります

申立てにあたっては,「やむを得ない事由」で返済が困難になったことを疎明する必要があり,その資料を添付しなければなりません。 例えば,事由によって,勤務先からの通知書,給与明細書,診断書等の書類が必要になります。

申立後,裁判所において審理をするのですが,審理期間としては少なくとも3ヶ月程度はみておいた方がいいでしょう。

また,裁判所において,再生計画の変更を認めるかについて,債権者の書面決議や意見聴取が行われることになります。


今回は以上です。
再生計画の変更を検討する段階では既に返済が困難になっているものと考えられますので,再生計画の変更によって解決を図ることができるのかについて早急に弁護士に相談をした方がいいと思います。
なお,当事務所では,個人再生の依頼をいただくと,再生計画認可後の返済代行等のサポートもさせていただいております。また,そのサポートの一環で,再生計画変更申立てを代理する場合の弁護士費用も大変ご利用がしやすく設定させていただいております。
認可後のトータルサポートの点も含めて,是非当事務所にご相談をいただけると幸いです。
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