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任意整理をするとどのくらい返済総額や月々の返済額が減るか?-任意整理による効果をシミュレーションしよう!


弁護士の櫻田です。

任意整理は,個々の債権者と直接交渉をして,借入残高のうち,利息や損害金の免除を受けた上で,元金を長期間(概ね3~7年程度)かけて分割払いするという内容の和解を締結するものです。

任意整理をしても,借金の元金は減りませんし,場合によっては,和解締結までの利息や損害金の支払いに応じないといけないこともあります。

しかし,和解をした時点で,返済総額が確定し,これに対する将来的な利息は付きません

このため,任意整理をすると,利息分だけ返済総額が減りますし,また,一般的な消費者金融などのクレジットカードやローンによる高金利の借金であれば,手続前よりも月々の返済額が減る可能性が高いのです。

では,任意整理をすると,返済総額や月々の返済額はどのくらい減るのでしょうか?
今回は,具体的に,任意整理による効果をシミュレーションしてみましょう。

なお,以下で具体的な返済のシミュレーションをする際,下記サイトを利用すると便利ですので,リンクを貼っておきます。
「カシオ計算機株式会社」計算サイト:https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183644

【事例①】100万円を金利15%・60回払いで返済をする場合

任意整理をしない場合のシミュレーション

100万円を借り入れて,金利15%,元利均等方法で,60回払いで返済をする場合,
返済総額:1,427,378円(元金分1,000,000円+利息分427,378円
毎月の返済額:23,789円
返済回数:60回(5年間)
となります。

5年間の利息分で約43万円も支払うことになります。

任意整理をする場合のシミュレーション

任意整理をする場合,原則として,利息・遅延損害金をカットしてもらい,元金を長期間の分割払いしていく内容での和解締結を目指します。
そこで,返済総額は元金の100万円と仮定しましょう。

なお,業者によっては,和解時までの利息や損害金の免除に応じてくれない場合もあり,この分が100万円に加算されることもありますが,金額としては多額になりませんので,計算の便宜上,ここでは無視します。

以下,返済回数で場合を分けて,シミュレーションしてみましょう。

36回(3年間)での分割払い

返済回数が36回(3年間)で和解できた場合,
返済総額:1,000,000円
毎月の返済額:27,777円
返済回数:36回(3年間)
となります。

この場合,任意整理をしない場合よりも,利息分だけ返済総額が減り,返済期間も2年短縮されますが,毎月の返済額は約4,000円増加してしまいます
毎月の返済額の負担を減らしたいのであれば,36回払いの和解だと厳しいでしょう。

48回(4年間)での分割払い

返済回数が48回(4年間)で和解できた場合,
返済総額:1,000,000円
毎月の返済額:20,833円
返済回数:48回(4年間)
となります。

この場合,任意整理をすると,返済期間が1年短縮される上,毎月の返済額も約7,000円減少します
弁護士費用の負担を考慮しても,任意整理のメリットを十分に受けることができるでしょう。

60回(5年間)での分割払い

返済回数が60回(5年間)で和解できた場合,
返済総額:1,000,000円
毎月の返済額:16,666円
返済回数:60回(5年間)
となります。

この場合,任意整理をすると,返済期間は手続前と同じですが,毎月の返済額は約11,000円も減ることになります。
48回での場合よりも,毎月の返済額が減り,任意整理による効果が大きいといえます。

まとめ

【事例①】では,任意整理をすると,利息分の約43万円の免除を受けることができますが,返済回数が36回の場合は,手続前よりも,毎月の返済額が増加してしまいます。
したがって,任意整理により毎月の返済額の負担を減らしたいのであれば,48回以上(厳密にいうと43回以上)の返済回数での和解をする必要があります。

【事例②】50万円を金利18%・60回払いで返済をする場合

任意整理をしない場合のシミュレーション

50万円を借り入れて,金利18%,元利均等方法で,60回払いで返済をする場合,
返済総額:761,781円(元金分500,000円+利息分261,781円
毎月の返済額:12,696円
返済回数:60回(5年間)
となります。

5年間の利息分で約26万円も支払うことになります。

任意整理をする場合のシミュレーション

任意整理をする場合,返済総額は元金の50万円と仮定しましょう。

なお,【事例①】と同様,和解時までの利息や損害金については,計算の便宜上,ここでは無視します。

以下,返済回数で場合を分けて,シミュレーションしてみましょう。

36回(3年間)での分割払い

返済回数が36回(3年間)で和解できた場合,
返済総額:500,000円
毎月の返済額:13,888円
返済回数:36回(3年間)
となります。

この場合,任意整理をしない場合よりも,利息分だけ返済総額が減り,返済期間も2年短縮されますが,毎月の返済額は約1,200円増加してしまいます
毎月の返済額の負担を減らしたいのであれば,返済回数をさらに増やして和解をする必要があります。

48回(4年間)での分割払い

返済回数が48回(4年間)で和解できた場合,
返済総額:500,000円
毎月の返済額:10,416円
返済回数:48回(4年間)
となります。

この場合,任意整理をすると,返済期間が1年短縮される上,毎月の返済額も約2,300円減少します

60回(5年間)での分割払い

返済回数が60回(5年間)で和解できた場合,
返済総額:500,000円
毎月の返済額:8,333円
返済回数:60回(5年間)
となります。

この場合,任意整理をすると,返済期間は手続前と同じですが,毎月の返済額は約4,400円も減ることになります。
48回での場合よりも,毎月の返済額が減り,任意整理によるメリットを十分に受けることができます。

まとめ

【事例②】でも,【事例①】と同様,任意整理をすると,利息分の約26万円の免除を受けることができますが,返済回数が36回の場合は,手続前よりも,毎月の返済額が増加してしまいます。
したがって,任意整理により毎月の返済額の負担を減らしたいのであれば,48回以上(厳密にいうと40回以上)の返済回数での和解をする必要があります。

シミュレーションを踏まえた上での留意点

手続前の借金額が大きく金利が高いほど効果がある!

上記の事例のシミュレーションからも分かるとおり,手続前の借金額が大きく金利が高いほど,任意整理をすると,返済総額が減少します
また,手続前の返済回数が少ない(毎月の返済額が大きい)場合も,任意整理による効果が大きいといえます。

毎月の返済額が減るかどうかは和解の返済回数による!

毎月の返済額の負担を減らしたいのであれば,一定以上の返済回数以上で和解をする必要があります。

任意整理をすると,将来的な利息の分だけ返済総額が減るとしても,少ない返済回数で和解をしてしまうと,毎月の返済額が手続前よりも増加してしまう可能性があります

和解である以上,返済回数については,相手方(業者)の合意を得る必要がありますが,事前に何回以上であれば毎月の返済額が減るのか見極めた上で,交渉をしなければなりません。

返済回数については,業者としての方針もあり交渉次第となりますが,あくまで一般論としては,消費者金融や信販会社であれば,36回以下でないと和解に応じないということは少なく,48~60回(もしくはそれ以上)での分割払いに応じてくれることが多いです。
この辺の返済回数を目安として,任意整理をするかどうかの検討をしてみてもいいかもしれません。

任意整理の毎月の返済額には余裕を持たせよう!

分割払いの和解をした後は,その和解に従って,長期間,毎月一定額を返済していくことになります。
和解をした時点では,返済に問題がなかったとしても,その後,不測の出費があるなどして返済が困難になってしまう可能性も否定できません。

そこで,毎月の返済額を設定する際は,あまりカツカツの金額にせず,「頑張ればもう少し返済できそうだけど,何かあると困るから,この位が確実だ」という程度にして,余裕を持たせた方がいいです。その方が,借金を完済できる可能性が高まると思います。

また,返済にあたっては,振込で行うことが通常ですので,振込手数料が発生します(弁護士に返済の代行を依頼する場合は,その手数料もかかります)。この手数料は,業者の数によって異なりますが,返済額を設定する上では,この点も考慮する必要があります。


以上,任意整理による効果をシミュレーションしてみました。
上記の事例は,借入れの場合を想定していますが,クレジットカードのショッピング枠を利用した場合の立替金についても,分割払いやリボ払いをするのであれば,基本的な考え方は同じです。
任意整理は,裁判所を介さない私的な整理手続で,自己破産や個人再生と比較して,ハードルが低いといえます。
自己破産や個人再生は避けたい,条件を見直せば返済をしていけるという場合には,任意整理による解決を検討してみましょう。
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