債務整理に関する記事詳細

任意整理で特定の債権者を手続から除外する場合


弁護士の櫻田です。

今回は,任意整理に関する記事です。

任意整理では,負債がある債権者のうち,特定の債権者に対しては弁護士が介入せず,手続から除外することが可能です。
これは,任意整理における大きなメリットの一つといえます。

仮に,自己破産や個人再生のように,すべての債権者を対象とする必要があるとすると,例えば,ローン会社に所有権留保が付された自動車であれば,自動車ローンが残っていると,引揚(返還)をしなければなりません。また,抵当権が設定された住宅であれば,住宅ローンが残っていると,競売にかけられるおそれもあります。
自己破産や個人再生のような裁判所における手続は,「債権者平等の原則」の下で行われます。銀行からの借入でも,勤務先からの借入でも,友人からの借入でも,すべて手続に加える必要があります。債務者の希望で,特定の債権者だけを除外することはできません。

この点,任意整理は,裁判所を介さない私的な整理手続であり,各債権者と任意で分割弁済の和解交渉をするものですので,どの債権者の借金を任意整理して,どの債権者の借金を任意整理しないかは自由なのです。

以下,債務の性質に応じて,任意整理の手続から除外することを検討すべき場合を紹介します。

自動車ローン


ローン会社の所有権留保が付いた自動車をそのまま使用し続けたいのでれば,任意整理の対象から除外して,今まで通り支払いを継続する必要があります。

通常,自動車ローンを利用する場合,ローン完済までは,担保として,ローン会社等に所有権が留保されています。そして,債務整理の手続をすると,その所有権に基づき,自動車を返還しなければなりません。

住宅ローン


住宅ローンの場合も同様です。
通常,住宅には銀行(又はその保証会社)に対する抵当権が設定されており,債務整理の手続をすると,その抵当権を実行して競売による回収を図ることが考えられます。

競売を避けたいのであれば,住宅ローンの銀行は任意整理の手続から除外して,住宅ローンはそのまま支払いを継続する必要があります。

なお,そもそも,住宅ローンそのものの返済が困難になった場合は,まずは,その銀行に相談をして,リスケジュールによる返済額や返済方法の見直しを検討した方がいいでしょう。また,住宅ローン以外にも借金があるのであれば,個人再生の利用を検討した方がいい場合もあると思います。
逆に,住宅を手放しても構わないということであれば,任意売却をした方がいい場合もあるでしょう。

勤務先からの借入

事情によっては,勤務先から借入をしている方もいるかと思います。
例えば,公務員の方であれば,共済組合が互助会などから融資を受けることも可能です。
しかし,これらの借入に対しては,給与天引きの形で返済をしていることが通常です。

自己破産や個人再生の法的手続をとると,勤務先からの借入についても除外をすることができず,また,弁護士受任後は返済を停止する必要がありますので,勤務先に手続のことが知られてしまう可能性があります。

したがって,勤務先には債務整理のことは秘密にしておきたいのであれば,任意整理を選択して,勤務先は手続から除外をすることを検討する場合もあるかと思います。

親族や知人からの借入


親族や知人からお金を借りている場合,相当程度親密な人間関係が基礎になっていると思いますので,自己破産や個人再生をして手続に含めてしまうと,これらの人間関係が破壊されてしまう可能性があります。

そこで,このような場合には,任意整理をして,親族や知人からの借入を手続から除外することを検討した方がいいでしょう。

親族や知人が保証人となっている借入


親族や知人からの借入の場合と同様,親族や知人が借金の保証人になっている場合,債務整理の手続をすると,保証人である親族や知人に請求がなされてしまい,やはり,親族や知人との人間関係が破壊されてしまう可能性があります。

そこで,このような場合には,やはり,これらの借金を除外できる任意整理の利用を検討すべき場合であるといえます。

取引先に対する買掛金等の債務


個人自営主の方などが対象ですが,取引先に対する買掛金等の債務について,弁護士が介入する事態となったら,今後は,その取引先と取引を継続できなくなり,最悪,事業を続けることができなくなるおそれがあります。

そこで,取引先に対する買掛金等の債務は,手続から除外して任意整理をするのが一般的です。

なお,他に借金があり,事業廃止もやむを得ないのであれば,自己破産を検討すべきでしょう。


以上のような場合には任意整理を検討すべき場合といえます。
ただ,事情によっては,自己破産や個人再生などの手続をした方が結果としてはいい場合もあります。
分からないことがあれば,まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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